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有給休暇の取得が義務化。罰則や管理の方法を紹介

2020年1月15日

働き方改革関連法案の1つとして、有給休暇の取得が義務化される法改正が行われました。2019年4月から、すでに施行されています。
有給休暇取得率の向上に期待できる改正として注目されていますが、企業の担当者としては具体的に何に気をつけ、どのように管理すれば良いのかを知っておかなくてはなりません。罰則もありますので、法違反にならないよう確実に押さえておきましょう。
今回は、有給休暇の取得義務化について、改正のポイントや罰則、管理の方法を中心に解説していきます。

そもそも有給休暇とは

有給休暇とは、労働基準法第39条にて定められた「年次有給休暇」を指します。 正社員はもとより、契約社員やパートタイマー、アルバイト、あるいは派遣社員や管理監督者でも要件を満たせば与えられます。
その名の通り有給の休暇なので、休暇中も従業員は平均賃金もしくは合理的な計算によって定められた額を受け取れます。

付与の条件

次の条件をすべて満たすと原則10日間が与えられます。
・雇い入れから6ヵ月間継続して勤務している
・全労働日の8割以上出勤している
従業員にはいつ取得するのかを決める権利(時季指定権)があります。
対して使用者には、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、請求された日から別の日に
変更する権利(時季変更権)が認められています。
請求できる期限は2年で、消化できず残った分は翌年度に繰り越し可能です。

付与日数の仕組み

付与日数は勤続6ヵ月で10日ですが、1年6ヵ月では11日、2年6ヵ月では12日と、継続年数に応じて増加します。6年6ヵ月以上で最長の20日です。
パートタイマーやアルバイトなど、正社員と比べて労働日数が少ない契約で働く人には、所定労働日数に応じて比例付与されます。
例えば週の所定労働日数が4日の場合、6ヵ月勤務で7日、1年6ヵ月で8日、6年6ヵ月以上では最長の15日が与えられます。

義務化がスタート

これまでは、有給休暇を2年以内に消化できないどころか、ほとんど取得できない人も多数いました。使用者には付与する義務こそあったものの、取得させる義務はなかったからです。
ところが、2019年4月からは確実に年5日を取得させなければならなくなりました。企業規模は問わず、大企業も中小企業も対象となります。中小企業の施行猶予といった仕組みもありません。


有給休暇が義務化された背景

多様で柔軟な働き方を自らが選択できる社会を実現させるために、政府が推し進めている抜本的な改革が「働き方改革」です。
「時間外労働の上限規制」や「正社員と非正規社員との待遇格差是正」などとともに、改革の目玉として実施されたのが、「有給休暇の取得義務化」です。

本改正が行われた背景には、日本の有給休暇取得率の低さがあります。日本の取得率が他の先進諸国と比較して極めて低いことは、多くの方がご存知かもしれません。
厚生労働省が公表した「平成30年就労条件総合調査の概況」によれば、平成29年における労働者1人あたりの平均取得率は51.1%で、産業別に見て最も低い「宿泊業、飲食サービス業」にいたっては32.5%しかありません。

取得率の低さは、生産性の低下や心身への影響、育児・介護と仕事との両立困難、離職率の悪化など、様々な問題の原因であると指摘され続けてきました。
「業務量が多くて取得できない」といった業務管理上の問題や、「同僚に気を使って休めない」「やる気がないと思われそうで取得しにくい」などの心理的な問題も根本にあります。
こうした状況を受け、今回の義務化に至ったのです。


有給休暇義務化の基本ポイント

実務にあたっては、いくつかのポイントがあります。基本的な点を中心に解説しましょう。

取得させる必要のある日数

付与した日を基準日とし、「1年以内に5日」を取得させる必要があります。
すでに従業員による自らの請求や、労使協定による計画的付与がなされている場合には、その日数分を5日から控除します。
つまり、以下のいずれかの方法で、1年以内に5日を取得させます。

対象となる従業員

取得させる必要があるのは、「年に10日以上の有給休暇を付与される従業員」です。 法律上、正規雇用や非正規雇用、有期・無期といった区別はありませんが、そもそも10日を付与されない従業員は本改正の対象から外れるため、雇用形態による違いは生じるでしょう。

例えばパートタイマーで、今年度の付与日数が7日の場合は、5日を取得させる義務はありません。
7日のうちすべてを翌年度に繰り越し、翌年度も同じ契約をもとに付与されると、繰り越し分と翌年度分で合計15日となり、一時的に残日数が10日を超えます。
しかし、これをもって「年に10日以上の有給休暇を付与される従業員」とはなりません。あくまでも「当年度に付与される日数」が10日以上の従業員に限るということです。

フルタイム勤務の場合、出勤率が8割を満たせば入社から6ヵ月継続勤務した時点で有給休暇が10日与えられるため、雇用形態に関わらず対象になります。

就業規則での定め

有給休暇は、就業規則の絶対的記載事項を定めた労働基準法第89条第一号の「休暇」に該当します。
したがって5日の取得を使用者の時季指定によって実行する場合には、就業規則で定めることが必要です。具体的には、対象者の範囲、時季指定の方法などです。


有給休暇義務化に違反すると適用されうる罰則

使用者が、条件を満たす対象者に対して年に5日の有給休暇を取得させない場合は、「30万円以下の罰金」が科されます。
罰金は従業員1人につき1罪となるため、従業員が100人の企業で全員が年に5日を取得できなかった場合は、最大で3千万円の罰金になるという理屈です。
就業規則で定めていなかった際も、同様に「30万円以下の罰金」となります。

また、今回の義務化以前の問題で、従業員から請求された時季に有給休暇を与えなかった場合も違法となります。「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が予定されています。
使用者が時季変更権を正当に行使したとしても、他の時季にすら与えないことはできません。例えば「上司に申請したけれど休ませてもらえなかった」という声はしばしば耳にしますが、これは違法です。有給休暇は法律が定める権利なので、正当な理由なく与えないという選択肢はないのです。

今回の義務化に関し、違反しても直ちに罰則が科されるわけではありません。労働基準監督署の指導や是正勧告がされてもなお改善されない際には罰則が適用されるでしょう。



有給休暇の管理方法

適切に管理するにはいくつかの方法が考えられますが、ここでは確実な取得に繋がる3つの方法と、そのポイントをご紹介します。

年次有給休暇取得計画表の作成

1つは、計画表を作成する方法です。職場別に、誰がいつ取得予定かを一覧で把握できる表を作成して管理します。
具体的な日程は従業員自身が書き込む仕組みを作れば、取得日を本人の自由に任せられます。

職場内で計画を共有することで、職場の繁忙期などを考慮した柔軟な調整が可能となります。
取得日を前提として業務に従事できるため、チームで取得予定者の業務をフォローするなど協力がしやすくなります。

年次の計画表を作成しても良いですし、業務の見通しが立てづらい業態の場合は、四半期ごとや月ごとの短期で作成しても良いでしょう。
この方法で対象者全員が年に5日以上を必ず取得できるようになれば、使用者の時季指定は必要なくなります。
以前から取得率が高く、誰もが年5日以上を取得するのが当たり前の職場なら、本改正による影響は非常に少ないと考えられます。

もっとも、本改正にもとづき使用者の時季指定を実施する場合でも、計画表はあったほうが望ましいでしょう。
本改正では従業員ごとの取得時季や日数、基準日を示した「年次有給休暇管理簿」の作成および3年間の保存義務も定められているので、いずれにしても表やシステムでの管理は避けられないからです。
計画表があれば管理簿の作成もスムーズになります。

企業から従業員への時季指定

2つめは、本改正に従い、使用者が時季を指定して取得させる方法です。
時季については、従業員の意見を必ず聴き、できる限り尊重して決定する努力義務が定められています。使用者が一方的に時季を決めるという性質ではありません。
使用者が従業員に対して日程を尋ね、従業員が具体的な日を決める流れとなります。
意見を聴くには、面談の他、計画表やメールで予定を提出させるなどの方法があります。

確実な管理のためには、基準日から一定期間が経過したタイミングで実際の取得・請求状況を確認し、その時点で取得も請求もしていない従業員に対しては、適宜はたらきかけが必要です。

なお、取得予定日に従業員が自らの意思で出勤したことで年に5日の取得を達成できなかった場合でも、使用者が労働を享受すれば法違反を犯したことになります。
この点も踏まえ、確実に取得する必要がある旨を従業員へしっかり説明することも大切でしょう。

計画的付与制度の導入

3つめは、計画的付与制度の導入です。これは、付与日数のうち、5日の取得は従業員の裁量に委ね、5日を除く分については計画的に取得させられる制度を導入する方法です。 今回の改正以前から設けられている制度で、利用にあたっては就業規則への記載および労使協定の締結が必要です。
製造業では、一斉に休ませることで工場の稼働コストが抑えられるとともに、従業員には長期連休を与えられるため、よく利用されています。
その他に、職場やチームごと、個別の従業員ごとといった単位で与えることも可能です。

計画的付与を導入すると、個別の管理が不要になるため、特に従業員数が多い企業ではメリットが大きいでしょう。
あらかじめ、いつ誰が休むのか把握しているため、1年を通じて業務の割り振りや予定も立てやすくなります。
また、忙しさから周囲に遠慮して自ら請求できない従業員が多数を占める企業でも、ためらいなく消化できるため、取得率の向上が期待できます。

具体的に休ませる時期には、次のような選択肢があります。

どの方法が適しているのかは業態や企業規模にもよるので、よく検討の上、導入すると良いでしょう。

有給休暇の取得義務化は全企業を対象にすでに施行されているため、確実な管理・運用が求められます。企業の担当者は計画表や計画的付与などの導入も検討しつつ、職場の状況に適した管理を目指しましょう。
有給休暇を取りやすい職場が増え、全体的な取得率が改善されれば、従業員の健康を守るだけでなく、生産性向上、優秀な人材の確保も期待できるでしょう。



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