2020年5月21日

企業の職場環境を改善する取り組みとして「5S活動」という言葉を聞くことがあります。単なる掃除程度に捉えられがちですが、そうではありません。意味や方法を理解した上で実践すると、高い効果を実感できるでしょう。 社内の士気を高めるためにも、5S活動の意味と目的をしっかりと理解し、会社全体の意思統一を図る必要があります。
5S活動の意味
「5S」とは、「S」から始まる以下の5つのキーワードを表す言葉です。5S活動は、製造業やサービス業など、あらゆる職場の環境改善を図るための活動です。
1.整理(Seiri):必要なものを残し、不要なものを処分する
2.整頓(Seiton):必要なものを使いやすいように置き場を決める
3.清掃(Seisou):作業場周辺や身の回りをきれいな状態に保つ。メンテナンスも含まれる。
4.清潔(Seiketsu):「整理」「整頓」「清掃」を意識して汚れのない状態を維持する
5.しつけ(Shitsuke):ルールや規律を守るのが皆の習慣になるようにする
「整理」「整頓」などの言葉を見ると当たり前のことのように思えますが、一般的な「整理整頓」と違って、ただ見た目がきれいに整っていればよいわけではありません。必要なもののみを残し(整理)、すぐに使いやすい定位置に置いておく(整頓)必要があります。
「清掃」も、ただほうきで掃くといったものではありません。汚れやゴミ・埃のない状態になるまできれいにして、機器類も次回すぐ使えるようにメンテナンスしておくことです。
5S活動の目的
5S活動をすると職場はきれいに整いますが、この活動の目的は清掃そのものではありません。5S活動の目的は、職場を安全な場所にし、作業の品質や生産性を向上させ、職場の雰囲気を改善することです。
そうすることで、会社内の一人ひとりが質の高い仕事をし、互いに協力しやすい環境を作ることで、企業全体としても成長していくことができます。
たとえば、「整理」をしていなくて不要なものが多く、「整頓」もしていなくて使用する道具や材料の定位置が決まっていないとどうなるでしょうか?必要なものを探すのにいちいち時間がかかってしまうでしょう。
見つかっても「清掃」していないため保管状態が悪く、汚れていたり劣化したりしていて、すぐに使えない状態ということもありえます。そうなると無駄な作業が増えてしまい、生産性は低下してしまいます。
5Sを徹底し、職場を「清潔」な状態に保てれば、社員のモチベーションも上がります。このような地道な活動を社員同士が力を合わせて行うことで、会社全体の士気も向上するでしょう。
5S活動の事例~製造業編~

5S活動の基本をおさらいしたところで、次は製造業における5S活動の事例を見てみましょう。 製造業は専用工具が多いので、配置を工夫して使いやすい位置に、すぐに取り出せる形で置く「整頓」が大切です。作業に必要ないものを処分する「整理」も不可欠でしょう。 5S活動の徹底は、製造業において最も怖い「事故」を未然に防ぐ効果もあります。
工場に関する5S活動
工場内にさまざまな工具や機械が乱雑に置かれていると、必要なものを見つけにくくて時間をとられますし、不意にぶつかって怪我をしかねません。そこで以下のような取り組みができます。 まず、通路をラインで区画し、色分けし、通路には機械や道具などを置かないよう徹底することが必要です。 次に工具の置き場を決め、種類別に分別し、置き場に工具名をシールで表示し、定位置化します(整頓)。その際、置き場の表示と同じシールを工具にもつけると一目瞭然で、元の位置に戻しやすくなります。 工具を例にしましたが、機器類も同様の仕方で「整頓」します。取り扱いに注意が必要なものは目立つ色で表示するなど、工夫しましょう。 「整理」で不要なものに含まれるのは、壊れて使えないものだけではありません。たとえば、2つだけで十分な工具が3~4つあるなら、余分な分は不要といえます。 基本的には廃棄し、どうしても廃棄するのが惜しい場合は、作業現場ではないほかの場所に片づけます。 ただし、保管期限を設けて明記し、過ぎたら廃棄するといった断固とした行動が必要です。そうしないと保管に場所をとることになりますし、モノが多いと整頓にも労力がかかります。
倉庫に関する5S活動
5S活動は、倉庫内での業務を円滑化するのにも一役買ってくれます。
まず、棚の中身の定位置を決めます(整頓)。その際、種類やサイズが違うものを積み重ねて、上に置いたものを取ってからでないと下に置いたものは取れない、といった置き方はしないでください。
次に、どこに何を置くのかを明確に表示することです。先述のように名前を書いたシールを貼るだけでは分かりにくいモノの場合は、写真を使って視認性を高めるのもよいでしょう。種類ごとに写真を貼る方法もあれば、棚一段分の写真をとって置き方を表示する方法もあります。
なお、消耗品の棚では、種類ごとに最大・最小の個数を表示すると便利です。最大個数以上に増えないようにし、最小個数になったら発注することで、余剰在庫も品切れも未然に防げます。
事務所に関する5S活動
事務所内でのデスクワークでありがちなのが、引き出しの中が乱雑になることです。
一例を挙げると、ペンは書けるものなら全部入れるのではなく、必要な種類と本数を吟味して、なくても支障ない分は処分しましょう(整理)。
使用状況を考え、黒ボールペン、赤ボールペン、シャープペン、蛍光ペン、それぞれ1本ずつだけなどと決めます。仕切りを使って置き場所を固定しましょう(整頓)。
また、パソコンやプリンタの配線周りにホコリが溜まっていると、不衛生であるというだけでなく、火災の原因にもなり非常に危険です。ワイヤーやフック、配線カバーなどを使ってコード類をまとめるなら、「清掃」も容易になるでしょう。
5S活動の事例~サービス業編~

5S活動が行き届いた店では、お客様が店に入った際に心地よく感じるのはもちろん、従業員が働きやすくなり、プロ意識が高まってサービスの質も上がります。結果的にお客様の満足度もアップするでしょう。
サービスに関する5S活動
あらゆる業種の中でも、最も衛生管理を問われるのが飲食業です。ホール内をきれいにすることはどの店でも大抵行っていますが、お客様が直接目に触れない厨房はどうでしょうか?
厨房での動線に無駄がなくなるよう、器具や機器の配置を変更することを検討できます(整頓)。調理、盛り付け、配膳といった一連の作業をスムーズに行ないやすいようにします。
中には、シンクなど動かしにくいものもあるかもしれませんが、ゴミ箱や調理器具、調味料や食材の位置を変えるのは容易でしょう。冷蔵庫内の「整理」や「整頓」も、作業効率を高めます。
また、汚れのない「清潔」を保つことが、衛生管理にも役立つのは言うまでもありません。従業員のプロ意識向上にも繋がります。
ピーク時の厨房は多忙を極めます。より効率的かつスピーディーに調理を進め、サービスの質を高めるために、5S活動を始めてみてはいかがでしょうか。
職場環境に関する5S活動
オフィスでも5S活動を実践できます。きれいに保たれた職場環境で仕事をすることで、従業員の意識も引き締まります。また、訪問客に与える印象も大きく変わるはずです。
また注意したい点として、5S活動は見えるモノだけを整理するにとどまりません。パソコン内にある情報、といった見えないモノも含まれます。すでに情報が更新されているのに、古いファイルやマニュアルが残っているなら、紛らわしくて混乱を招きかねません。
不要なファイルがないか定期的にチェックする、新しい情報が出たら古い不要な情報は廃棄するなど、「整理」を習慣づけるようにしましょう。
5S活動は、業種にかかわらず職場環境の改善に役立ち、ひいては企業の利益にも繋がります。企業が成長していくためには、社員一人ひとりの意識改革と生産性の向上が欠かせません。
実施がまだという職場では、この機に5S活動の導入を検討してみてはいかがでしょうか。実施したものの効果を実感できていない場合でも、今回取り上げた事例を参考にして、再度取り組んでみることをおすすめします。

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