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突然の団体交渉申し入れに対応する方法

2020年9月1日

新型コロナウイルスに起因して少なくない企業で業績悪化が深刻となる中、労使関係においても雇用関係の終了をはじめ様々な紛争が生じており、当事務所においても連日多くの労務相談をいただいている状況です。
このような中、一般合同労組(以下「ユニオン」といいます。)の活動が活発化しています。当事務所においても、緊急事態宣言前後からユニオンからの団体交渉申し入れに関連した相談が増加しておりますし、実際に団体交渉に立ち会った相手方ユニオン幹部の話では、コロナに関連する労務相談が激増しているということでした。

今後、新型コロナウイルスの企業業績に対する影響は予測が立ちませんが、企業業績の低迷に起因する労働問題の増加が続くうちは、ユニオンの活動も活発であると思われ、あらゆる企業が突如としてユニオンから団体交渉申し入れを受ける可能性があります。
そこで、今回は、ユニオンから突如団体交渉の申し入れを受けた場合における企業対応について、いくつかポイントをご説明します。

当社の従業員はユニオンに1名のみだが、当社の労働組合として団体交渉に応じる義務があるか。

よくいただく質問ですが、団体交渉に応じなくてはならない場合がほとんどです。なぜなら、たとえ企業外のユニオンであり、且つ対象従業員に当社の関係者がいなくとも、当該団体が労働組合法上の目的のために活動される組織であれば「使用者が雇用する労働者の代表者」(労働組合法第7条第2号)に該当するためです。
そして、団交拒否は不当労働行為として違法となるため、企業としては団体交渉に応じざるを得ません。
そのため、少なくとも現・元従業員が加盟しているユニオンから団交の申し入れがあった場合には、団体交渉に応じるべきです。


団体交渉に応じる場合の注意点


団交申し入れがあった場合、まずは開催日時、場所を決定する必要がありますが、組合より一方的に組合事務所又は会社会議室での団体交渉を求められる場合が多いです。しかし、そのいずれにも応じず、外部の会議室を予約するべきで、予約する時間としては経験上2時間を提案すればほとんどの組合が応じます。 また、会社が予約した会議室であれば、2時間経過時点で「議論が白熱しているので団交を続けよう」と求められても予約時間の終了を理由に打ち切ることが可能となるため、会社の費用で外部の会議室を予約するのが適切です。

次に、団体交渉には代表者の出席を求められる場合が多いですが、必ずしも代表者が出席する必要はなく、交渉事項について決定権限を有する担当者が出席することで足ります。他方、団体交渉を得意とする弁護士を同席させることは有益ですが、弁護士のみを団体交渉に出席させることは不当労働行為となる可能性が高いので避けるべきです。

また、団体交渉の際には、冷静に、且つ真摯に先方の要望に対して検討する必要がありますが、先方の要望に譲歩しなくとも不誠実団体交渉とはなりませんし、怒声や野次等、正常な交渉を困難とするような行為に対しては毅然と対応するべきです。この点、事前に想定問答を作成しておくことは有益です。
なお、交渉が紛糾し、結果として団体交渉が打ち切りとなった場合、後に続く不当労働行為救済申立手続等の手続に備え、団体交渉については録音すると共に、社内的に議事録を作成して証拠化するべきです。

最後に、組合から求められる労働協約には安易に署名してはなりません(交渉序盤で締結を求められる暫定労働協約が典型的)。また、これに関連して、組合が作成した議事録に署名・捺印した場合も労働協約となって会社を強く拘束するため、決して署名・捺印してはなりません。前述の通り、議事録は内部的に作成するべきです。


会社に押しかける、社長の自宅付近で街宣活動をするといった行動に出た場合

往々にしてユニオンは、団体交渉が思うように進まない場合等に、会社施設や役員の自宅付近での街宣活動、取引先への抗議活動、これらの活動や会社批判動画のyou tubeへのアップといった名誉・信用棄損的活動をすることがあります。
この点、組合活動として正当な活動については、刑事上、民事上の違法行為であっても、法的責任を負わないとされています(法第1条2項、第8条)。
この活動の正当性について、裁判所は活動の態様から社会的相当性の範囲内の活動かという観点から判断します。会社として正当性のない活動であると判断した場合には、街宣活動等の禁止を求める仮処分を裁判所に申し立て、差し止めや損害賠償請求を検討します。
そこで、街宣活動がなされた場合には、回数・態様・出席人数・ビラの内容等を詳細に記録し、証拠化することが肝要です。
なお、裁判所は、役員個人宅周辺といった私的領域における組合活動の正当性については原則として認めませんので、これらの活動がなされた場合には直ちに法的措置を検討するべきです。

ユニオン対応には、日常的な企業活動とは異なりストレスのかかる場面が多くある上、対応を誤った場合には大きな法的リスクへ転化する可能性があります。団体交渉の開催申し入れを受けた場合には、早急かつ十分な対応準備をお勧めします。



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