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ニューノーマル時代の労務管理20選!対策Q&A Vol.1

2021年1月13日

ニューノーマル時代の労務管理20選!企業を守るために今必要な対策方法を解説します。
Vol.1は今話題の労働問題編となります。
 ※2021年1月13日時点の情報に基づき作成しております。

同一労働同一賃金に関する最高裁判決を踏まえて、当社の賃金制度にどのように反映させる?

【質問】
同一労働同一賃金について、非正規労働者に対して賞与、退職金や各種手当についていくつも最高裁判決が出た。今後の賃金制度設計にあたり、非正規労働者との格差が不合理でないと判断されるためにはどのような制度とするべきか?

【回答】
令和2年10月、平成30年にだされたハマキョウレックス事件、長澤運輸事件判決以来の同一労働同一賃金に関する最高裁判決が立て続けに出されました。

 これらの最高裁判決を受け、相当数の手当、賞与、退職金について判断がなされましたので、各企業において賃金規程整備にあたって参考にするべき裁判所の考え方が見えてきたといえます。
 「裁判所が不合理と認められる相違」(労働契約法第20条。今後はパート有期法8条)であるかを判断するにあたっては、「当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」を踏まえて、事案毎に問題となった企業において設けられている各待遇の差が、当該待遇が設けられた趣旨・目的に照らして合理性があるかという判断手法が用いられます。

 すなわち、「最高裁は賞与、退職金については差を設けても大丈夫とした」「~手当については最高裁が差を設けてもよいとした」「~手当は不合理とした」という単純な話ではなく、当該手当が設けられている趣旨・目的を前提として、当該企業の正社員及び非正規社員の職務内容、責任の程度、配置の変更範囲等を考慮した場合に格差に合理性が認められるかという観点から判断されます。
 
 そのため、賃金規程の整備にあたっては、自社の従業員の職務内容等について考慮したうえ、各手当の設計をするべきであるといえます。

 なお、同一労賃の議論を受け、多くの企業において、正社員の手当削減の動きがみられますが、従前存在した手当の削減は労働条件の不利益変更となるため、それはそれで慎重な検討が必要となることにも留意が必要です。

最高裁の結論部分のみを参考にして自社の賃金規程に反映させることはリスクがあります。 各支払項目の趣旨・目的から考えて、正規・非正規の各差を正当化することができるかという観点から判断することが必要となります。

副業先での過重労働による精神疾患・・・
本業である当社は責任を負う必要があるのか?


【質問】
副業を許可している従業員について、過重労働が原因で精神疾患にかかってしまうという問題が発生してしまった場合、副業が原因で過重労働になっているにもかかわらず 本業である当社が損害賠償責任を負うリスクがあるのか?

【回答】
従業員の過重労働を原因とする損害賠償請求訴訟においては、①業務と疾患との相当因果関係、②企業の安全配慮義務違反の2点が争点となります。
 
この点、長時間労働が健康被害をもたらすことは医学的にも裏付けられており、長時間労働は相当因果関係の考慮要素として重要な位置付けを占めます(①)。
また、企業は従業員の労働時間について管理把握義務を負っているため(労働安全衛生法66条の8の3)、安全配慮義務の判断にあたっては、労働時間の管理把握義務が果たされているかが重要な要素となってきます(②)。

 すなわち、安全配慮義務の違反は、結果の予見可能性(このままでは悪い結果(疾患等)が発生してしまうかもしれないな、という予見)と結果の回避可能性(企業として当該結果の回避が可能であること)の有無によって判断されます。
 そして、労働時間の管理把握義務を負っている結果、企業として従業員の労働時間を知らなかったとはいえない状況にあるため、過重労働があったこと自体で労災の結果について予見可能性があるとされてしまうケースが多いといえます。
 また、企業は業務負荷を軽減する(労働時間を削減する)ことが可能ですから、当該従業員の疾患という結果回避可能性も認められます。
 以上から、企業として従業員の過重労働を放置・看過した場合には安全配慮義務違反が認められ、結果として損害賠償責任が認められる可能性が高いといえます。

 そして、使用者として副業を許可・容認しているということは、自社での労働時間以外にも労働している時間があることの認識があるということになります。
 そのため、副業についての認識があることで「副業先の労働時間まで合わせると過重労働だな」という予見が成り立ち得ます。
 したがって、理論的には副業先の過重労働が原因で本業であるはずの自社も労災の損害賠償責任を負う可能性がある、ということになります。

労基法上労働時間を管理把握しなくてもよい管理監督者も、 労働安全衛生法上の労働時間の管理把握義務は 免れない点に注意が必要です。

経営状況の悪化に伴う雇用調整として、 企業にはどのような手法が認められるのか?


【質問】
コロナ禍以降、経営状況が厳しくなったため、我が社では人件費の削減を検討している。従業員の労働条件を変更する方法、不当解雇にならないような人員整理手法は?

【回答】
従業員の労働条件を不利益に変更するためには、当該従業員との合意(同法第8条)、就業規則の変更(同法10条)、又は労働協約の締結(労組法第14条)による必要があります。
 多くの企業で検討されるのは個別合意か就業規則の変更になろうかと思われますが、特に賃金の減額について、従業員の全員から個別合意が取れる場合は稀です。 そこで、就業規則の変更による労働条件の不利益変更が検討されることになります。
 この点、裁判所は就業規則の変更による労働条件の不利益変更の中でも、賃金の減額については従業員に与える影響の大きさから、労働条件変更の高度の必要性を求め、その合理性を厳格に判断する傾向にあります。
具体的には、従業員の不利益の程度、変更の必要性、変更内容の相当性、代償措置となる労働条件の改善状況、労働者との交渉の状況等が総合考慮されます。  賃金の減額に踏み切る場合には、以上の事情を従業員に対して丁寧に説明して理解を求めることが必要となります。

 次に、経営難を理由として人員削減を行う手法として整理解雇が考えられます。 この点、労働契約法第16条の解雇権濫用法理の中でも、整理解雇は使用者側の事情によりなされる解雇として、その要件は厳格に判断されます。具体的には、人員削減の必要性、手段としての整理解雇の必要性(解雇回避努力義務)、被解雇者選定の妥当性、手続の妥当性といった4つの要素が厳格に判断されます。
 そして、コロナ禍によって急速に経営状況が悪化している中では、人員削減の必要性は認められるとしても、他の要素について疎かにしてよいということはありません。むしろ、裁判所は経営上の必要性については経営判断を尊重して比較的緩やかに認める一方、他の三要素については厳格に判断する傾向にあります。
 整理解雇に踏み切る場合には、その前提として経費削減をはじめとした経営努力は勿論、希望退職の募集、退職勧奨といった形で慎重に手続を進める必要があり、間違っても拙速・強引な進め方をするべきではありません。

人件費の削減、人員削減のいずれも、法律上厳格な要件が課されており、 実施する場合には慎重な検討と準備が必要となります。経営状況に応じて実施するのであれば、早期に検討を開始するべきといえます。

昨今のハラスメント紛争事例の特徴と、 企業として特に気を付けておくべき対応策はあるか。


【質問】
パワハラ防止法の施行を受け、企業として最低限抑えておくべきポイントは何か。また昨今のハラスメント訴訟における傾向と対策は?

【回答】
スマートフォンの普及により、多くのハラスメント訴訟において従業員は被害状況を録音・録画して証拠化していることが一般化しています。そのため「言った、言わない」となることは少なく、上司等の発言の評価・文脈が争点となるケースが増えており、立証の困難さのみを理由として訴えが排斥される場合は少なくなっているといえます。
 次に、労働施策総合推進法の改正により、使用者としてパワハラを防止するために雇用管理上の様々な措置義務を負うこととされたため、パワハラの行為者に対する使用者責任のみならず、直接的に措置義務違反を理由として責任追及される可能性が出て来たといえます。

 また、昨今は従来から問題となっていたセクシャルハラスメントに加え、LGBTに対するSOGI(sexual orientation and Gender Identity)ハラスメントが社会問題化しており、近時経済産業省における戸籍上は男性ながらも女性として就労する原告に対するトイレ使用の制限を違法とし、132万円の損害賠償を認容する裁判例が出ました。

 人口の5%~7%はLGBTに該当するという民間の調査結果も出ており、LGBTは特殊な人々ではなく、一定規模以上の企業においては構成員であることが当然といえます。
 
 今後、上記訴訟に象徴されるようにSOGIハラが違法であるという認識が一般化しているにもかかわらず、LGBTに対する差別意識を払拭できない企業においては慢性的・制度的に訴訟リスクを抱え続けるといえます。
 LGBTに対する差別意識の解消も、企業の喫緊の課題といえます。

スマートフォンの普及により、昨今のハラスメント訴訟における証拠収集は容易になっています。また、パワハラ防止法やLGBT訴訟等、ハラスメントに対する社会の関心は高く、一度ハラスメント紛争が生じれば「ブラック企業」としての風評が生じるリスクがあります。

就業規則見直しのポイントはどこか?


【質問】
昨今の法改正や判例動向を踏まえ、就業規則の改訂を検討している。最低限おさえておきたい就業規則見直しのポイントは?

【回答】
非正規労働者を雇用している企業においては、同一労働同一賃金に関する最高裁判例をはじめとした裁判例に対する理解を前提とした賃金規程の整備・改訂は必須といえるでしょう。

 また、新型コロナウイルス感染拡大に端を発したテレワークの恒常化は、従来の仕事の在り方を大きく変化させるものです。この変化は、労働時間の管理から人事評価に至るまで、労使関係全体に大きく影響を与えるものといえます。これに伴い、テレワーク規程の整備は必須となります。テレワーク規程の内容によっては、従来発生しなかった労務紛争が生じるリスクがあります。また、テレワークの一般化に伴い、働く時間に対する評価から成果に対する評価へと人事評価制度の見直しがなされるのであれば、それに伴って賃金規程の見直しも検討が必要となります。

 更に、種々の理由から副業を容認する企業が増える中、従来の副業禁止から容認に移行したことに伴って新たに生じる問題に対応した副業規程の整備が必要となります。一般に懸念されている割増賃金発生の問題や過重労働に起因する健康被害問題に備えた規定は勿論、副業によって企業秘密漏洩や企業の競争力を脅かす事態を避けるための規定整備が必須となります。

 そして、労働時間の上限規制についての対応体制整備が落ち着いたことで、従来以上に長時間労働に対する厳しい行政指導が予想されます。自社の就業実態と採用している労働時間制に齟齬がないか、採用している労働時間制は就業規則に正確に落とし込まれているかを確認する必要があります。

あらゆる労働紛争において、就業規則は出発点となる存在であるにもかかわらず、 十分に精査された就業規則が広く整備されているとはいえない状況です。 予防労務の観点からは、判例実務を基礎に企業実態に合った就業規則の整備が不可欠です。



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