「医師の働き方改革」の成功事例。聖路加国際病院の取り組み。

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聖路加国際病院
人事・法務部 人事課 マネジャー 石川 様(全体統括担当)
人事・法務部 人事課 アシスタントマネジャー 松岡 様(システム選定、運用統括など担当)
人事・法務部 人事課 堀江 様(勤怠管理実務担当)
人事・法務部 人事課 薊 様(勤怠管理実務担当)
人事・法務部 人事課 滝澤 様(システム導入・設定担当)
法人事務局 情報システム課(人事課兼務) 鈴木 様(システム導入・要件定義担当)
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業種:医療・介護
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拠点数:3箇所
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対象規模:医師 約430人(2025年3月)
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運用開始:2024年1月~
事業内容:医療
特徴:創設125年、厚生労働省 特定機能病院(520床)として医療事業を展開。創設者ルドルフ・B・トイスラーの掲げたキリスト教精神に基づく全人的医療を実践している。
所在地:
〒104-8560 東京都中央区明石町9-1
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導入の目的
医師の働き方改革に対応するため、分散している医師の勤怠管理情報を一元化したい
勤怠管理に関する課題の多さから人事課や医師に負担がかかりがちな状況を解消し、業務効率化を図りたい
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導入製品
1.勤怠システム、紙媒体、表計算ソフト(Excel)が混在していた勤怠管理
Q:導入の背景について教えていただけますか?
石川さま:従来、医師の勤怠管理は以下のように複数の媒体・システムにまたがって行っていました。
- シフト管理:1ヶ月単位の変形労働時間制を表計算ソフトにて管理
- 打刻:アマノのタイムレコーダーから他社の勤怠システムに反映されたものを確認
- 時間外申請:当初は「1週間ごとに紙媒体で申請」、その後「医師ごとに表計算ソフトで申請」へ移行
- 有給休暇申請:勤怠システムにて申請・管理
これまで、打刻は勤怠システムで確認していました。しかし、打刻漏れが多く、実際の勤務開始・終了時刻を正確に把握することが困難でした。時間外申請は表計算ソフトへ移行して、紙媒体の提出催促、回収の後追い、人事での転記作業はなくなりました。しかし、月30~40件の未提出が残り、過去分を人事課でフォローする業務負担は継続していました。
また、表計算ソフトでは検印状況(データにまだ不備がある状況なのか、既にメンテナンス済みなのか)の確認に手間がかかりました。各医師のファイルを個別に開く必要があり、確認作業に時間を取られていました。有給休暇は各医師が勤怠システムで申請していたのですが、実際のシフト情報と照合すると申請漏れが多く見つかり、人事課で頻繁に代理申請をする必要がありました。
このように従来の管理方法では、勤怠管理データを横断的に確認できませんでした。特に勤務間インターバルや代償休息は、管理・確認が非常に困難な状況でした。副業・兼業については、申告情報として把握はしていましたが、院内勤務と通算した勤怠管理を行うことができていませんでした。
こうした課題の多さから、勤怠データの確定までに時間を要していました。未提出や修正対応が常態化し、給与計算業務が逼迫して人事課の時間外労働が増加している状況でした。
どのようなシステムでこれを解消できるのか、長年検討を重ねてきました。しかし、そもそも40前後の診療科をまとめて管理すること自体が簡単ではありません。決定的な解決策がないまま、医師の働き方改革(2024年)への対応という新たな課題も出てきました。
当院ではB・C水準(医師の時間外労働上限の特例水準)の指定申請を予定していました。勤務間インターバル管理、面接指導への対応などを見据えると、勤怠情報を一元管理する仕組みが欠かせません。制度要件を事前に把握・対応できることも重要です。そこで、勤怠管理システムの導入を検討することになりました。
松岡さま:当時は私たちの業務も煩雑でした。医師からも、タイムレコーダーで打刻して、シフト表と残業申請は表計算ソフト、有休申請は勤怠システム……と、あちこちに分散しているのは手間がかかるという声が挙がっていました。
2.医師の働き方に特化したTimePro-VGと出会ったことがブレイクスルーに
Q:TimePro-VG導入までの経緯について、お聞かせいただけますか。
松岡さま:検討にあたって、「現在利用している勤怠システムで医師の勤怠管理まで行うことができるか」という方向性で確認を進めました。しかし、人事課側の設定の負担がかなり大きく、希望要件も叶えられないものが多かったのです。医師は1日の間に何度も出退勤する働き方が日常的です。それに対応できない点は致命的でした。例えば、「退勤後に急な呼び出しがあったらどう処理するのか」など。
鈴木さま:リソース面での問題もありました。今回、医師の勤怠管理に絞って対策したいなかで、勤怠システムを改修すると他の職種にも影響が出てしまいます。その点も考慮した改修は、マンパワー的にもスケジュール的にも厳しいものでした。当時は2024年4月(医師の働き方改革開始)に間に合わせるのは難しいだろうと考えていました。
松岡さま:そんな折に、アマノの担当者さんからご連絡をいただきました。「医師の働き方改革を踏まえて、同規模の医療機関の協力のもとTimePro-VGの改修を進めています」とのことでした。導入スケジュールもクリアできます。見せていただいたUIも、それまで勤怠管理に利用していた表計算ソフトに近いものでした。これなら医師にも受け入れられやすそうで良いと思いました。
Q:導入決定から運用開始までのご準備やアマノのサポート体制はいかがでしたか。
松岡さま:導入決定から実際の導入までは毎週のようにお打合せを重ねました。実際の画面を見ながら「ここを変えたい」、「じゃあこうしましょう」といったかたちで確認しました。かなり複雑といわれる「代償休息」の計算も、法令に沿った方法を組み込んでいただきました。さらに、現場での使われ方も聞きながら、反映していただきました。担当者さんが法令を熟知されていたので、逆に私たちが「こういう場合はどうしますか?」と教えていただくこともありました。
実際の導入は3段階に分けて行いました。「いくつかの診療科でトライアル運用」、「研修医を除く常勤医師で運用」、「研修医を含めた全常勤医師で運用」という流れです。研修医はさまざまな診療科をローテーションします。短期間で次々と管理者が変わってしまうため、当初は運用対象に含めるのが難しいと見ていました。しかし、トライアル運用を進めるなかで「人事課が研修医の管理者になれば解決できるのでは」というアイデアが出て、全常勤医師で運用できるようになりました。
堀江さま:トライアルを実施したときは大変でしたね。表計算ソフトでの運用も残っていたし、TimePro-VGの運用もまだ固まっていなかったので、問い合わせも多かったです。医師の働き方改革に関する法改正の理解も進んでいなかったので、不安を感じる雰囲気も正直ありました。
Q:「医師の理解を得るのが難しい」というのは、他の医療機関でもよく耳にします。貴院ではどうやって乗り越えてこられたのですか。
石川さま:今回の新システム導入や運用改善においては、院長が病院の方針として進めたことがかなり大きかったと感じています。「働き方改革担当」の副院長を任命し、副院長が自ら先頭に立って各診療科にアナウンスしてくれましたし、現場の医師から挙がってきた声にも対応してくれました。
鈴木さま:そうですね。「法改正に対応するためには運用を変えなければならない」、「すべて要望通りにすることは難しい」としっかり伝えて納得してもらう、難しい役目を引き受けてくれました。
松岡さま:打刻漏れの回数が多い医師たちに、私たちに代わって副院長が直接指導をしてくれることもあります。人事課でも日常的に打刻漏れについて各医師に連絡していますが、副院長の直接指導は心理的な影響力が大きく、段違いの即効性があります。
石川さま:逆に医師側の意見として、私たちに「どうすると医師が受け入れやすくなるか」といった感覚的な部分を教えてくれたこともありました。現場の医師とバックオフィス、両方の声を受け止めてくれて、とても頼もしかったですね。
3.勤怠管理が一元化・見える化されたことで、医師や管理者の勤怠管理に対する意識も高まった
Q:現在、TimePro-VGはどのように運用されているのですか?
松岡さま:常勤医師約430名の勤怠管理に利用しています。具体的には下記のようになっています。
出退勤打刻・修正
医師は院内に設置した打刻機およびWEBclocking(PCからの打刻)で出退勤の打刻を行っています。打刻漏れが発生した場合、対象の医師にTimePro-VGから通知が自動で送信されます。その後も修正していない医師には、人事課から入力の催促をしています。
遅刻・早退もデータとして明確になりました。必要に応じて、個別に事情確認や指導を行っています。また、検索リストで打刻漏れのデータを抽出でき、人事側で状況の把握や催促がしやすくなりました。この運用が定着したことで、勤怠の締めまでに全員が修正・確認を行い、最終的な勤怠データが100%整った状態で確定できています。
シフト管理
医師がシフト情報をTimePro-VG上に入力します。この時点で、所定労働時間の過不足、シフト上の勤務間インターバル不足のアラートが出るので、各自確認しながら入力できます。人事課で最終確認を行い、シフト未設定の医師やアラートが解消されていない医師に連絡しています。特に、各診療科を週単位でローテーションする研修医については、ローテーション情報が表示されるため、所属変更に伴う管理負担が大きく軽減されています。
休暇登録
休暇は医師がTimePro-VG上に入力しています。人事課では検索リストを利用して、法定休日と有給休暇の取得日数を確認しています。旧システムでは人事課で有給休暇の代理申請を頻繁に行っていましたが、現在はほとんどなくなりました。医師・管理部門双方の確認負担が軽減されています。
時間外勤務・代償休息の管理
時間外労働の申請は、医師がTimePro-VGに時間と業務内容を登録し、上長医師が検印しています。人事課では、入力された時間外実績にもとづいて、面接指導対象者の抽出・日程調整や、代償休息付与の連絡を行います。基本的には時間外入力が行われた後に確認しています。ただし、研修医はより厳格な健康管理が求められます。打刻ベースで長時間労働やインターバル不足を予測してアラートを設定し、早めに対応しています。
以前は表計算ソフトで管理していたので、時間外勤務と所定時間との重複分を控除する作業が必要でしたが、導入後は自動的に計算されるようになりました。遅刻・早退が発生している日の時間外も、該当時間を差し引いて計算されます。実態に即した管理ができています。
また、検索リストを活用することで、月80時間超の対象者を即時に抽出できます。早期の長時間勤務状況把握と対応につながっています。法定休日も目視ではなくデータとして確認できるため、未達が見込まれる場合には早期にフォローを行えています。
勤務間インターバル不足が発生した場合も、自動通知および画面上のアラートで把握できます。代償休息も自動計算されるため、確実に管理できるようになりました。
これにより、水準ごとの年間時間外労働時間をリアルタイムで把握できるようになりました。
副業・兼業勤務の管理
医師が副業・兼業のデータをTimePro-VGで入力し、人事課では通算した時間外実績を確認して、面接指導の対象者を抽出しています。これまで管理が難しかった、副業・兼業を含めた労働時間も管理できるようになりました。実績データがリアルタイムで可視化されることで運用が変わりました。問題が顕在化してから対応するのではなく、事前に把握し早期に調整・指導を行えます。これは大きな効果だと感じています。
こうして、勤怠・時間外・休暇・法定休日・勤務間インターバルなどの情報がTimePro-VG上で一元管理されています。東京都の立入検査の際も、事前準備やデータ加工の必要がありませんでした。画面上でそのまま状況を確認いただけました。
Q:これだけ勤怠管理データが見える化されると、現場の意識も変わってきているのではないですか。
松岡さま:そうですね。医師による日々の打刻漏れの件数は、導入当初と比較して約4割減少しました。また、勤怠管理に関する自発的な問い合わせもくるようになり、各診療科の管理者も部下の勤怠状況を以前より細かく把握できるようになりました。医師自らが勤怠データを処理することにより、勤怠管理に関する意識が高まった様子がうかがえます。
例えば、勤務間インターバル不足のアラートが対象医師本人や上長医師に自動的に送られます。代償休息を早期に付与することが当たり前になってきました。
Q:特に気に入っていらっしゃる機能・仕様などはありますか。
堀江さま:各種の検索リスト(下記)はもはや欠かせないですね。システムの利用開始前に設定したものに加えて、利用開始後に必要になった項目もあります。担当者さんと相談しながら、適宜更新・新設してもらっています。
TimePro-VG検索リスト使用状況まとめ
| 使用頻度 | 検索リスト名 | 使用目的 |
|---|---|---|
| 日次 | 休暇日に打刻がある人 | 休暇日や有給休暇取得日に打刻・出勤が発生していないかを確認 |
| 明け+時間外 | 時間外申請が自動計上されない仕様のため、内容確認後に修正対応 | |
| 総時間外60時間以上 | 面接指導対象者の予測・事前把握のため使用 | |
| 総時間外80時間以上 | 面接指導対象者の確定確認のため使用 | |
| 週次 | 代償休息発生者リスト | 勤務間インターバルの確保状況を確認し、代償休息付与のために使用 |
| 休日4日未満(※月前半は休日6日未満) | 法定休日が確保されているかを確認 | |
| 月2回 | シフトインターバル不足者リスト | 月初・月後半にシフト上のインターバル不足の有無を確認し、必要に応じて医師とシフト修正を相談 |
| 休暇取得一覧 | 公休日に有給休暇を取得していないかを確認し、必要に応じてシフト修正を相談 | |
| 遅刻・早退リスト | 人事部長へ報告 | |
| 打刻修正者リスト | 副院長へ報告 | |
| 特定宿日直使用者 | 外科系医師の土日宿日直(特定宿日直)で、所定時間・時間外申請がされていないかの確認 | |
| 例外入力者 | シフトで「例外」を選択しているが、半休取得がない医師へのフォロー | |
| 月次 | 緊急呼出(患者番号のみ登録) | 緊急呼出に関する申請漏れがないかを確認 |
| 出張者リスト | 出張届との照合のため使用 | |
| 時短勤務者リスト | 給与計算に必要な情報として使用 | |
| 打刻漏れリスト(日次エラーのフォロー) | 打刻修正を行わない医師へのフォロー。給与計算のため検印を確実に行う目的 | |
| 総時間外100時間以上 | 報告書作成時に使用 |
TimePro-VG導入により変化したこと
・医師の打刻漏れ、時間外減少
副院長からの直接指導と医師自らが勤怠データを処理することの習慣化により、勤怠管理への意識改革に成功。全ての医師が高い意識で出退勤打刻を行う環境となった。また、医師、上長医師の双方で勤怠情報の注意喚起の把握がスピーディーに可能となったことにより、不要な時間外労働の減少につながった。
・人事課の時間外減少
医師の意識改革により、現場で勤怠データのメンテナンスがリアルタイムに進んでいくことで、人事課によるデータメンテナンス業務が減少。分析データから労働時間の予見もできるようになり、締め日に慌てない業務スキームを確立。結果、時間外労働の減少にもつながった。
Q:法令遵守にとどまらない、抜本的な医師の働き方改革へ向けてすばらしいスタートを切られたわけですが、今後の展望についてうかがえますか。
松岡さま:アラートで注意喚起や督促はできています。次のステップとしてはアラートが飛ぶ前でもシステムにログインすればエラーは確認できる、ということをもっと周知していけば、まさにリアルタイムの管理が実現するので、もっと勤怠状況を気にかける習慣を作っていきたいですね。
石川さま:この1~2年は、まず法令に則った新たな勤怠管理の体制を作ることに注力してきました。業務効率化できて、安定運用できる体制です。現場も人事課も運用が安定してきました。
これからは「更に労働時間を短縮していく」ために一歩踏み出せるのではないかと感じています。TimePro-VGのデータも活用しながら、各診療科にフィードバックを行い、働き方を検討してもらう取り組みを進めていきたいと思います。
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