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本当に怖い粉塵爆発とは?原理や条件、対策方法を解説

工場などの設備では、粉塵爆発防止のための対策が非常に重要です。粉塵爆発の規模や威力は凄まじく、一瞬で建物の倒壊や数多くの負傷者が出る事態を招きます。今回は、そんな粉塵爆発の原因や起こさないための対策について解説します。

粉塵爆発とは

誰もが一度は耳にしたことがある「粉塵爆発」。なんとなく粉塵爆発の恐ろしさは聞いたことがあるものの、実際はどのような状態を粉塵爆発と呼ぶのかわからないという方も多いのではないでしょうか。粉塵爆発とは、可燃性の粉塵が大気中に浮遊した状態で着火し、爆発を起こす現象のことです。ここでの可燃性粉塵とは、金属粉、炭塵、さらに小麦粉などの可燃物を含みます。粉塵爆発が原因となった有名な事故として、近年では、台湾にある八仙水上楽園の音楽イベントでの事故が記憶に新しいのではないでしょうか。この爆発事故は、台湾のテーマパーク八仙水上楽園で発生し、負傷者約500名、死者15名の惨劇をもたらしました。この事故は、イベントで使用された可燃性の物質を含むカラーパウダーが原因となったようです。このテーマパーク事故の負傷者の多さからも、その恐ろしさを感じ取ることができるでしょう。

粉塵爆発が起こる三条件

大惨劇をもたらす可能性のある粉塵爆発には、それが起きる三条件というものがあります。これらの条件がすべてそろった瞬間に粉塵爆発が発生します。ここからは、そんな粉塵爆発が起こる三大条件について見ていきましょう。粉塵爆発が起こる三条件は、「酸素」、「爆発下限濃度以上の可燃物の粉塵」、「最小着火エネルギー以上の着火源」です。

酸素

粉塵爆発の三条件のうちの1つ目は、「酸素」です。粉体に爆発性がある場合には、「粉塵爆発限界酸素濃度」と呼ばれる酸素濃度があります。酸素濃度が粉塵爆発限界酸素濃度以上になると粉塵爆発が発生します。多くの有機粉塵は、酸素濃度が12~13%以下の場合粉塵爆発は発生しません。しかし、有機物の微粉末や金属粉末など特殊なものの場合、わずか数%の酸素濃度でも爆発を招きます。そもそも粉塵はとても細かく、物質の体積に対する表面積の割合が非常に大きいため、粉塵の周りには酸素が満ち足りている状態になっています。したがって、粉塵自体大変燃えやすいものといえるでしょう。

爆発下限濃度以上の粉塵

2つ目の条件は、その粉塵が「爆発下限濃度以上の可燃物の粉塵」であることです。粉塵が爆発する濃度には下限があります。その下限より上回る濃度で、且つ他の2つの「粉塵爆発が起こる三条件」も満たしている場合には、粉塵爆発が起こる可能性が極めて高いといえます。この爆発下限濃度を調べる際は、吹上式と呼ばれる方法を用います。容器内で粉体を圧縮空気によって分散させてから、電気火花による爆発の有無を調査します。粉塵爆発しなくなる濃度を下限界濃度とし、その数値を基に酸素濃度管理を行います。

最小着火エネルギー以上の着火源

最後に、3つ目の条件である「最小着火エネルギー以上の着火源」について解説します。最小着火エネルギーとは、粉塵の着火に必要な最小エネルギーのことを指します。この最小着火エネルギーにより、静電気による着火の危険性を判定します。

エネルギーが小さい、もしくは粉塵濃度が粉塵爆発に至る数値ではないために粉塵爆発が起きない領域のことを「不爆領域」と呼びます。反対に着火エネルギーと粉塵濃度の関係で粉塵爆発が引き起こされてしまう領域のことを「爆発領域」と呼びます。この最小着火エネルギーが「爆発領域」以上の値になると、粉塵爆発が発生してしまうのです。

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小麦粉でも粉塵爆発が起こる?

日常生活の中で料理にも使用する身近な粉体といえば、小麦粉があります。冒頭でも簡単に触れた通り、小麦粉でも十分に粉塵爆発は起こり得ます。小麦粉を利用した小規模な「粉塵爆発の起こし方」実験が、科学実験教室で行われることもあります。もしも小麦粉が何かのはずみにより、勢いよく空気中にばらまかれてしまい、そこに着火してしまうと粉塵爆発が起こりかねません。身近な小麦粉でも恐ろしい粉塵爆発を引き起こす可能性があるということを意識し、なるべく注意して取り扱うことをおすすめします。

小麦粉を貯蔵タンク内に空気圧で送入していたところ、その貯蔵タンク内で粉塵爆発が発生するという事故がありました。調査の結果、この爆発が発生した様々な原因が見つかりました。まず、事故発生時に貯蔵タンク内に送入されていた小麦粉が、空気と一緒に送られていたこと。次に、タンク内では小麦粉が空気と混ぜ合わされたことによって粉塵雲ができていたこと。そして、貯蔵タンクをのぞいた作業員が、点灯している白熱電灯を手に持っており、それが着火源となったこと。これらは、粉塵爆発が起こる三条件を満たしています。

小麦粉自体はきわめて無害な粉体のように感じられますが、爆発の三条件を満たすことによって、危険な粉塵爆発が引き起こされることがわかるでしょう。この事故発生時の小麦粉の粒子の大きさは50ミクロンでした。粉塵爆発を起こす粉体の粒子の大きさは、500ミクロン以下といわれています。ちなみに、小麦粉だけでなく、砂糖もまた粉塵爆発を起こす可能性のある粉体なので、非常に身近なものとはいえ、取り扱いには注意が必要です。

粉塵爆発の仕組みや原理

続いて、粉塵爆発の仕組みや原理について説明します。前述の通り、爆発の三条件をすべて満たすことによって発生しますが、実際にはどのようなプロセスで爆発するのでしょうか。

まず、空気中の有機物の粉塵粒子に熱エネルギーが加えられることによって表面温度が上昇し、それらが発火することによって、連鎖的に他の粉塵粒子に熱が伝播して燃焼し、最終的には爆発に至ります。

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粉塵爆発を防ぐには?

では、悲惨な事故を防ぐためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。粉塵爆発は、「空気中の酸素」、「爆発下限濃度以上の可燃物の粉塵」、「最小着火エネルギー以上の着火源」の3つの条件がそろうことで発生します。より確実に爆発を防ぐためには、酸素濃度の管理や着火源を減らすための管理が必要です。どのような粉塵の危険性が高いのかを把握し、徹底的な管理体制を敷く必要もあります。ここからは、事故を防ぐためにできる取り組みを見ていきましょう。

粉塵管理の徹底

まず、管理を徹底することが最も重要です。人為的なミスなどによって爆発を発生させないためにも、徹底した粉塵管理で粉塵爆発発生確率を低くするようにしましょう。

たとえば、粉塵を扱う際に使用する容器を密閉することが大事です。粉塵爆発の三条件のひとつに、燃焼するだけの「酸素」があるということが挙げられます。粉塵を扱う容器が密閉されていることによって、粉塵爆発に必要な酸素が供給されません。粉体を扱う際は、密閉容器の中で扱うように管理徹底しましょう。

容器から粉塵が漏れてしまった場合は、速やかな清掃除去が必要です。工場などで粉体を取り扱う際は、集塵機などを設置したり、こまめな清掃・換気を行うなどの工夫が必要です。

特に注意が必要な粉塵は以下の通りです。取り扱う場合は厳重なチェック体制を整えましょう。マグネシウム・アルミニウム・アルミ軽合金・鉄粉・エポキシ樹脂・コーンスターチ・チタン・微粉炭・その他可燃粉塵

粉塵の潜在危険性の確認

粉塵の潜在危険性も十分に確認する必要があります。特に、工業機器を利用する上では、発生する粉塵の危険性を確認することが必要不可欠でしょう。

実際に粉塵の潜在的な危険性を確認するには、まず原料や製品のSDSを確認します。工場内に堆積する粉塵や中間製品などの中に、性状のはっきりしない粉塵がある場合には、爆発性試験をするのが良いでしょう。

着火源管理の徹底

着火源管理を徹底することで、発生率を低くすることができます。特に、工場などではこの着火源管理の徹底が非常に重要です。よくある粉塵爆発の発火原因として、静電気があります。その他にも溶接などによる火花、ベルトコンベア等のベルトスリップによる摩擦熱、電気設備損傷によるスパークなど、あらゆるところに原因が潜んでいることがわかるでしょう。これらの原因を完全に除去することは難しいですが、静電気による着火を防ぐ対策としては、窒素置換などが挙げられます。それ以外の原因に対する施策としては、粉体を扱う工場内での喫煙を控える、火花の散る作業は粉体から離れた場所で行う、などの注意が必要でしょう。

まとめ

非常に恐ろしい粉塵爆発。今回はその原因や仕組み、防止のためにできる対策について紹介しました。実際の事故は、静電気が原因となることが多いものの、工場などの人が出入りする場所は静電気の発生を抑えることが困難です。したがって、被害を未然に防ぐためには防止策を取る必要があるでしょう。被害が甚大になる可能性を持つ恐ろしい粉塵爆発を防止するためにも、環境衛生研究所では粉塵爆発性試験を承っております。

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食品関連の穀物粉:砂糖、小麦粉、スターチ、香辛料等
工業関連の金属粉:Mg、Al等
化学関連の樹脂粉:エポキシ、フェノール等

  • 1. 爆発のし易さ評価:爆発下限濃度試験
  • 2. 着火のし易さ評価:最小着火エネルギー試験
  • 3. 爆発の激しさ評価:爆発圧力・爆発圧力上昇速度試験
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